親から実家を相続したものの、そのまま手付かずで固定資産税だけを払い続けていませんか?どうしたら良いか分からないと、つい放置してしまいますよね。
空き家を売却する際の税金負担を心配する方が多いですが、控除を活用することで軽減できる場合があります。
この記事では、空き家を売却する際に知っておきたい税金の基礎知識や、利用できる控除制度について解説します。
空き家の売却までにかかる4つの税金
空き家を売却する際には、4つの税金が発生します。事前にどんな税金がかかるのかを把握しておくことで、余計な出費やトラブルを防げます。
【譲渡所得税】空き家の売却益に課税される
譲渡所得税とは、空き家を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課される税金のことです。
譲渡所得税の計算式は以下のとおりです。
譲渡所得税=売却価格ー取得費(空き家を取得した費用)ー譲渡費用(売却にかかった費用) |
譲渡所得税は売却価格が取得費と譲渡費用を上回った場合に課税され、以下のように所有期間によって税率が異なります。
税率 | |
短期譲渡所得(所有期間5年以下) | 20.315% |
長期譲渡所得(所有期間5年以上) | 39.63% |
同じ金額の売却益でも、5年を超えて所有していたかどうかで税額が倍近く変わるため、所有期間の確認は重要です。
【印紙税】売買契約書にかかる
印紙税は、空き家を売却する際の売買契約書に貼る「収入印紙」にかかる税金です。
契約書に記載された売買金額によって税額が決まり、売主と買主がそれぞれ負担します。租税特別措置法の改正により、2027年3月31日まで経験措置が適用されています。
収入印紙は郵便局や法務局で購入可能です。忘れずに契約書に貼って、割り印を押すことで納税したことになります。
【登録免許税】相続登記の名義変更で発生する
登録免許税とは、不動産の登記手続きにかかる税金のことです。実家を相続した場合、まず被相続人である親御さんから相続人の自分へ名義変更する「相続登記」をします。
基本税率は「固定資産税評価額×0.4%」です。相続人が複数いる場合は、それぞれの持分に応じて税金が課されます。
参考:国税庁
【固定資産税】売却成立まで課される
固定資産税は毎年1月1日時点で、空き家を所有している人に課される税金です。売却する際は一般的に引き渡し日を基準に、売主と買主が日割りで清算します。
注意点は空き家を放置しておくと、自治体から「特定空き家」に指定されてしまう場合があることです。
「特定空き家」は固定資産税の軽減措置が外れて、税金の負担が最大で6倍に跳ね上がってしまう可能性があります。
解体するか、活用するか、早めに対策を考えることが大切です。
参考:国土交通省
【具体例】使わない空き家を500万で売った場合
使わない空き家を500万円で売却した場合にかかる税金を具体的に見ていきましょう。空き家の所有期間は通算10年、解体費用に200万円かかったとします。
- 譲渡所得税
譲渡所得:500万円−200万円=300万円
税額:300万円×約20%(長期譲渡の税率)=約61万円 - 印紙税
1,000円 - 登録免許税
500万円×0.4%=2万円
- 固定資産税
500万円×1.4%(標準税率)=7万円
自分のケースに当てはめて、どのくらいの税金がかかるのか事前にシュミレーションしておくと安心です。
≫関連記事:空き家の5つの売却方法とは?税金の基本と控除や補助金の活用術を詳しく解説!
空き家の売却で知っておきたい税金控除・特例3選
空き家の売却にかかる税金が心配という方にとって、税金の負担を減らせる特例や控除はぜひ知っておきたい制度です。
ここでは、代表的な3つの控除制度について詳しくご紹介します。
相続した空き家の3,000万円特別控除:売却益を大幅に減らせる
相続した空き家を一定の条件で売却した場合、売却益から最大3,000万円までを控除できる制度です。
通常であれば約20%かかる税金がかからなくなるので、利用者は大きなメリットがあります。
ただし、特例を受けるためには売約する空き家が一定の要件を満たさなければなりません。例えば、耐震リフォーム済み、もしくは解体した上で売却するなど、いくつかあるので事前に確認しましょう。
具体例:4,000万円で売却した場合は最大で約600万円節税できる
今回は5年以上所有していたと仮定して、節税効果を計算します。
- 控除なしの場合
譲渡所得:4,000万円
税額:4,000万円×約20%(長期譲渡の税率)=約800万円 - 控除ありの場合
譲渡所得:4,000万円−3,000万円=1,000万円
税額:1,000万円×約20%(長期譲渡の税率)=約200万円 - 節税効果
800万円−200万円=約600万円
控除を受けるための必要書類
相続した空き家を売却した際の3,000万円の特別控除を受けるには、以下の書類が必要です。
- 被相続人居住用家屋等確認書
- 売買契約書の写し
- 登記簿謄本
- 住民票
- 戸籍謄本
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書
被相続人居住用家屋等確認書や住民票は、市町村役場で申請します。
耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書は専門の機関や建築士へ依頼する必要があるため、不動産業者や自治体の窓口に相談するのがおすすめです。
取得費加算の特例:支払った相続税額の一部を取得費に加算できる
取得費加算の特例は相続した不動産を売却する際に相続税を払っている場合、一部を「取得費」に加えられます。特例を使うには、相続税の申告をしていることが前提です。
相続した空き家を売却する際に、二重課税を避けられます。ただし、相続税の申告期限から3年以内に売却する必要があるなど、注意点があります。
具体例:特例を活用して約123万円節税したケース
5年以上所有した不動産を5,000万円で売却し、取得費が1,000万円、譲渡費用が200万円、相続税を800万円支払っているケースを想定します。
- 特例を使わない場合
譲渡所得:5,000万円−(1,000万円+200万円)=3,800万円
税額:3,800万円×約20%(長期譲渡の税率)=約773万円
※ 特例を使わない場合は、譲渡所得税は約773万円かかります。 - 特例を使う場合
取得費:1,000万円+600万円=1,600万円
譲渡所得:5,000万円−(1,600万円+200万円)=3,200万円
税額:3,200万円×約20%=約650万円
※ 特例を使うと譲渡所得税は約650万円に抑えられます。※ 支払った相続税のうち、按分計算で600万円を売却した不動産に加算できると仮定して計算します。
- 節税効果
773万円−650万円=123万円
特例を使うことで約123万円の節税効果があり、相続税を支払っている方にとってメリットがあることが分かります。
特例を受けるための必要書類
取得費加算の特例を受けるには、相続税を払ったことを証明するために以下の書類が必要です。
- 相続税申告書の写し
- 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
- 譲渡所得の内訳書
取得費加算の特例は相続税の計算と関連するため、書類も複雑になりがちです。自分で準備するのが難しい場合は、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。
低未利用地100万円控除:相続した土地を売却するときの税負担を軽くできる
小規模な空き地を売却する際に、譲渡所得から最大100万円を控除できる制度です。譲渡価格が合計500万円以下の土地が対象で、地域の空き地活用を促す目的で導入されています。
相続した空き家を解体し、土地のみを売却する場合に利用できる可能性があります。2025年12月31日までの制度のため、売却を検討されている方は早めに動くのがおすすめです。
参考:国税庁
具体例:控除を活用して約20万円節税したケース
5年以上所有した不動産を売却し、譲渡価額が400万円、取得費と譲渡費用を合わせて50万円かかったケースを想定します。譲渡益は、「譲渡価額−(取得費+譲渡費用)=350万円」です。
- 控除なしの場合
譲渡所得税:350万円×約20%(長期譲渡の税率)=約71万円 - 控除ありの場合
譲渡所得税:(350万円−100万円)×約20%(長期譲渡の税率)=約51万円 - 節税効果
71万円−51万円=20万円
控除を利用すると、約20万円の節税効果があると分かります。
控除を受けるための必要書類
低未利用地の100万円控除を受ける場合にも、以下の書類を準備する必要があります。
- 低未利用地等確認書
- 売買契約書の写し
- 土地の譲渡前後の利用状況が分かる書類
- 登記事項証明書
自治体によって書類の様式が異なるため、事前に市町村役場の窓口で相談するのがスムーズです。
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税金控除を受けるまでの基本的な流れ
空き家の売却で税金控除を受けるには、期限内に確定申告をする必要があります。ここでは、大まかな流れを5つのステップでご紹介します。
①相続の開始時期と控除期限の把握
税金控除を利用するには、特例ごとに期限が決められています。期限を過ぎてしまうと控除が使えなくなり、税負担が多くなる可能性があります。
早めに売却の計画を立てて、行動することが大切です。自分の空き家がいつから相続の太陽になっているか確認しましょう。
②控除や特例の適用条件を確認
所有している空き家が控除や特例の要件を満たしているか、事前に確認しておく必要があります。
控除額や適用できる上限額も制度によって異なり、自分の状況に合った制度を選ぶことが大切です。
控除の対象外になってしまうパターンもあるため、不安な方は早めに専門家へ相談しましょう。
③必要書類の準備
控除を受けるには、確定申告に必要な書類をもれなく準備しなければなりません。制度ごとに必要書類が異なるため、事前にリストアップしておくことをおすすめします。
自治体の窓口での申請が必要な場合があり、取得までに時間がかかることもあります。書類不備や提出漏れがあると、控除が適用されないこともあるため注意しましょう。
④確定申告の実施
必要書類がすべて揃ったら、確定申告を行います。提出の期限は、空き家を売却した翌年の2月16日から3月15日までが原則です。
e-Taxや郵送、窓口で提出する方法がありますが、添付書類の確認漏れを防ぐには税理士のサポートを検討すると安心です。
⑤税務署による確認と控除適用
確定申告書を提出した後は、税務署で書類の内容が確認されます。提出内容に問題がなければ、1〜3ヶ月程度で控除や特例が認められます。
万が一内容に不備や不明点がある場合は、税務署から問い合わせや追加資料の提出を依頼されることがあります。
スムーズに処理してもらうために、税務署からの依頼は速やかに対応しましょう。
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税金控除を受ける際の注意点3選
空き家の売却で税金控除を受けるには、いくつか注意しておきたいことがあります。 ここでは、特に気をつけておきたい3つのポイントを解説します。
控除の条件を満たしているか
最も大切なのは、売却する空き家が控除の条件をすべて満たしているかを確認することです。
例えば「被相続人居住用家屋等確認書」の発行要件は、耐震の基準や売却価格の条件が細かく定められています。
建物を解体してから売却する場合と、そのまま売却する場合では、要件が異なります。 相続登記が済んでいない場合は控除の対象外になるため、必ず手続きしておきましょう。
基本的に控除の併用はできない
複数の税金控除制度がありますが、基本的にそれらを同時に利用することはできません。
どの制度を利用するのが、ご自身の状況にとって一番有利になるのかを比較検討する必要があります。
例えば、「相続した空き家の3,000万円特別控除」と「取得費加算の特例」は同時に使えません。ご自身で判断が難しい場合は、税理士などの専門家へ相談するのが良いでしょう。
確定申告を忘れずに行う
税金控除を受けるには、確定申告が必須です。「売却益が3,000万円以下だから税金はかからない」と自己判断して確定申告をしないと、控除は適用されません。
必ず確定申告の期限内に、必要書類を添付して申告を行うようにしましょう。 書類に不備があると、控除が受けられなくなる可能性もあるため、提出前に再度確認することが大切です。
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相続した空き家売却で損しないために
相続した空き家を売却する際は、税金の仕組みや控除制度を理解しておくことが大切です。
税金の負担を軽くするための控除や特例には適用できる期限があるため、売却が決まったら早めに準備しましょう。
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