「マイホームが欲しいけれど、ローンを組むのは心配」「いきなり家を買うより、まずは試しに住んでみたい」と思う方も多いのではないでしょうか。
特に地方移住や古民家暮らしに関心がある方にとって、購入と賃貸のどちらを選ぶかは大きな悩みのひとつです。
そこで近年注目されているのが「譲渡型賃貸」という選択肢です。一定期間、家賃を支払いながら住み続け、契約期間終了後に条件を満たせば物件の所有権を譲り受けられます。
譲渡型賃貸は住宅ローンの負担を避けながらマイホームが手に入り、空き家を自分好みに活用できる点がメリットです。
本記事では、譲渡型賃貸の仕組みやメリット・デメリット、探し方、利用時の注意点を解説します。
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譲渡型賃貸とは
「賃貸で家賃を払い続けても自分の資産にならない」「マイホームは欲しいけれどローンを組むのは不安」と感じている方は少なくありません。
譲渡型賃貸なら、家賃を支払いながら最終的にマイホームが手に入れられます。
ここでは、譲渡型賃貸の仕組みや背景、他のマイホームを持つ手段との違いを解説します。
仕組みと背景
譲渡型賃貸とは一定期間の賃貸契約後に、入居者へ所有権を移転する契約形態です。「RTO(Rent to Own:レント・トゥ・オウン)」と呼ばれることもあります。
最初は賃貸として暮らし、契約で定められた期間や条件を満たすと、最終的に自分の名義に切り替わります。
譲渡型賃貸は、空き家の増加や管理負担の課題の解決策として注目が集まっている制度です。
売買ではすぐに買い手がつかない物件を使いながら引き継ぐ仕組みにすることで、入居者の事情を調整しやすくしています。
不動産業者と連携して取り組む自治体も多く、地域再生の一環として導入されています。
通常の賃貸との違い
期間が決まっている賃貸は契約満了となれば退去が前提ですが、譲渡型賃貸では物件の所有者が入居者に移る点が異なります。
通常の賃貸契約は建物の使い方や修繕は基本的に大家の判断に委ねられ、入居者は許可なしに手を加えられません。
一方、譲渡型賃貸では契約の時点で、譲渡の時期や居住年数・修繕内容といった条件を明記されます。
入居者が将来的に所有者となる前提で暮らすため、物件の維持管理や修繕に関われる範囲が広がります。
譲渡型賃貸は、入居時から一部のリフォームやDIYが許可されることも少なくありません。こうした自由度の違いが、通常の賃貸と譲渡型を分けるポイントです。
売買との違い
譲渡型賃貸と売買は支払い構造や立場が大きく異なります。
譲渡型賃貸の場合、家賃を支払っているときは賃借人として住み、契約期間終了後、正式に所有権を譲り受けます。
段階的に居住・確認・譲渡と進むため、リスクを抑えてマイホームを持てる点が特徴です。
一方、売買契約は契約時点で物件の所有者が変わるため、購入者には住宅ローンの返済や固定資産税の負担が発生します。
ただし、譲渡型賃貸は自由に転売できるとは限らず、地域への定住や利用継続を条件とする契約もあるため、目的を理解したうえで検討することが大切です。
譲渡型賃貸のメリット
「マイホームが欲しいけれど、今すぐ購入するのは不安」と感じる方は多いのではないでしょうか。
譲渡型賃貸は支払いに不安がある方でもマイホームが持てる手段として、注目が集まっています。
ここでは、譲渡型賃貸のメリットを紹介します。
賃貸中は固定資産税・火災保険料の負担がない
譲渡型賃貸では契約期間中は所有権がまだ移転していないため、多くの場合、入居者には固定資産税や火災保険料は発生しません。
不動産にかかる税金や保険料は、法律上の所有者が負担すると決められています。譲渡型賃貸の期間中は、登記上の名義が大家または自治体の所有者にある状態です。
譲渡型賃貸は通常の賃貸と同じように、契約期間中は余計な維持費を気にせず住み始められます。
譲渡契約後にかかるコストを見据えつつ、安心して生活環境を整えられる点がメリットです。
ローンが組みにくい人でもマイホームが持てる
譲渡型賃貸は、ローンが組みにくい・頭金の用意が難しい方でもマイホームを持てます。契約当初は賃貸としてスタートするため、ローンを組まずに入居できます。
一般的な住宅購入でローンを組みたい場合は、金融機関の審査を通過する必要があります。一方で、譲渡型賃貸は幅広い層にマイホームを持つチャンスがある仕組みです。
地域によっては子育て世帯やUターン希望者、移住促進を目的とした優遇条件が設けられていることもあります。
移住やリフォームに関する補助金を活用できる
譲渡型賃貸では移住支援やリフォーム補助といった、自治体が設けた各種制度を活用できるケースがあります。
地域への移住を促す目的で、住宅改修費や移住支援など生活の立ち上げを後押しする制度を整えています。
たとえば、山梨県甲府市では、空き家の改修費を最大50万円助成する制度や移住した際の支援金の活用が可能です。
その他にも地域によっては家賃補助・引っ越し費用補助があるため、利用できる補助金を調べておくことで生活の初期コストを抑えられます。
ただし、補助対象となる条件や他制度との併用は自治体ごとに異なるため、事前確認を必ず行いましょう。
DIYができる物件が多い
譲渡型賃貸のなかには、古民家を対象に入居者が自ら改修できる物件もあります。
特に地方では、空き家を再生して地域に定住してもらうことを目的に、DIYやリフォームを前提とした契約が増えています。
DIYができる譲渡型の物件は、自分で家を整えるという体験価値を得られる点がメリットです。入居者は自分の手を加えることで、暮らしへの愛着が生まれます。
譲渡型賃貸のなかでも古民家物件は、「住む」と「直す」を同時に楽しめる選択肢としておすすめです。
関連記事:空き家DIYとは?費用相場やメリット・デメリットについて解説
譲渡型賃貸のデメリット
「家賃を払いながらマイホームを手に入れられるのは理想的」と感じる方も多いでしょう。譲渡型賃貸は魅力的な仕組みですが、事前にデメリットも理解しておくことが大切です。
ここからは、入居を検討する際に知っておきたい4つのデメリットについて解説します。
総合的な費用が高くなる場合がある
譲渡型賃貸は一般的な賃貸や一括購入に比べて、最終的な総費用が高くなることがあります。
所有者は売買であれば代金を一括で受け取れますが、譲渡型賃貸では家賃という形で分割回収するため、資金をすぐに得られません。
所有者は入居者が途中で退去する可能性や、建物の劣化・修繕費の発生といったリスクも抱えています。
このように、代金を回収するまでの時間的な損失や途中解約のリスクを補うために、物件価格や賃料がやや高めに設定される傾向があります。
入居者は長期的に見ると総額が高くなる可能性があるため、将来の譲渡価格や支払総額を計算しておくことが大切です。
入居を満たす要件が多い
譲渡型賃貸は通常の賃貸よりも入居要件が細かく設定されていることが多く、誰でもすぐに入居できるわけではありません。
家族構成や年齢、収入に制限を設けている場合もあり、選考や書類審査を経て入居者を決定する仕組みです。
賃貸期間の満了後に所有者を譲渡する性質上、入居者の生活状況が重視されています。
自治体のなかには、地域への定住意思や住民登録の移転、地域活動への参加を条件としているケースも少なくありません。
入居を希望する場合は物件条件だけでなく、地域社会との関わり方を含めて検討することが大切です。
対象の物件が少ない
譲渡型賃貸は全国的に見ても取り扱い件数が少なく、希望条件に合う物件を見つけにくいのが現状です。
制度として注目されているものの、譲渡型賃貸を紹介する自治体や業者は限られています。
空き家の場合は築年数が古く、修繕が必要なものも多いため、すぐに住める状態の物件は多くありません。
特に新築や改修済みの物件は人気が集中し、掲載から短期間で契約が決まる傾向にあります。
希望する条件がある場合は定期的な情報チェックが欠かせません。理想の物件を見つけたら、すぐに自治体や業者に問い合わせる行動力が重要です。
取得できるまでの期間が長い
譲渡型賃貸は、契約から入居者に所有権が移るまで時間がかかります。すぐにマイホームを持てるわけではなく、数年単位での居住を経てから譲渡されるのが一般的です。
多くの自治体では、5年〜10年の賃貸期間を経て譲渡する形式を採用しています。入居者はその間に生活基盤を整えたり、家の修繕を行ったりしながら地域になじむ期間を過ごせます。
賃貸の契約満了後に条件を満たしていれば、正式に所有権の移転手続きが行われるという流れです。
譲渡型賃貸を希望する方は長期的な計画を立て、数年間の生活を見据えて検討しましょう。
譲渡型賃貸の探し方
「譲渡型賃貸に興味はあるけど、どこで情報を探せばいいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
譲渡型賃貸の情報を見つけるには、自治体のホームページやまちづくりサイト、地域のまちづくりサイトをチェックするのが効果的です。
ここからは、譲渡型賃貸を見つけるための主な3つの探し方を紹介します。
自治体のホームページ
譲渡型賃貸は、自治体の公式ホームページや空き家バンクから探す方法が最も信頼できます
自治体が仲介する物件は契約条件や管理体制が明確で、トラブルを防ぎやすい点がメリットです。
「○○市 空き家バンク」「○○町 移住住宅」などで検索すると、地域独自の制度ページや募集要項が見つかります。
たとえば、茨城県境町では新築の譲渡型賃貸の物件を募集していることがあります。
自治体のホームページは登録物件と同時に、補助金や支援金のサポート内容も確認できるため便利です。
人気のエリアでは募集期間が短いため、気になる地域の情報をブックマークし、定期的に確認できるようにしておきましょう。
不動産サイト
譲渡型賃貸は自治体だけでなく、民間の不動産サイトや空き家専門サイトでも見つけられます。
不動産業者はリフォーム済み物件の事例が多く、DIY不要でそのまま住めるなど自治体より選択肢が広がります。空き家の専門サイトは、地域をまたいで検索する際に便利です。
たとえば、空き家や古民家の再生を得意とした会社では、10年間の賃貸期間を経て土地と建物を贈与する形で物件を紹介しています。
また、一部の不動産サイトでは、譲渡型賃貸の条件で検索できる特集ページを設けています。
不動産サイトの活用は、自治体の空き家情報だけでは見つからない物件を探す方法としておすすめです。
まちおこしサイト
移住促進や地域活性化を目的とした「まちおこしサイト」では、譲渡型賃貸の募集情報や空き家再生プロジェクトを紹介しています。
自治体主導ではないものの、地域おこしの一環として情報を発信しています。
自治体の公式ホームページよりも現地の暮らし方や住民インタビュー、移住体験談がリアルな視点で紹介されているのが特徴です。
また、物件情報だけでなく仕事や地域活動をセットで探せるため、実際の暮らしをイメージできます。
まちおこしサイトは、イベントの参加や見学ツアーを通じて、地域とのつながりを作りながら物件探しができるため、移住検討中の方におすすめです。
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譲渡型賃貸の利用前に知っておきたい注意点
譲渡型賃貸は制度の仕組みや契約内容をよく理解せずに申し込むと、思わぬ出費やトラブルにつながりかねません。
入居を検討している方は、契約条件や費用、地域のルールの確認が不可欠です。
ここからは、契約前に確認しておきたい3つの注意点を紹介します。
所有後の登記費用や固定資産税を事前に計算する
譲渡型賃貸は一定期間借りたあとに「所有者」となるため、所有権を移すための登記費用や毎年の固定資産税が発生します。
登記費用とは所有権を移す際に必要な手数料で、登録免許税(固定資産税評価額の2%)や司法書士への報酬が含まれます。
譲渡完了後は固定資産税・都市計画税・火災保険料の維持コストも必要です。
賃貸期間中は維持費の負担はありませんが、所有権移転のタイミングで発生するため、あらかじめ年間の維持費を試算しておくことが大切です。
固定資産税評価額によっては、贈与税の課税対象となる可能性があります。自治体が関与しない場合は、税理士へ確認しておくと安心です。
解約や譲渡不能時の取り扱いを確認する
譲渡型賃貸は一定期間の居住を前提に「譲渡」を約束する契約ですが、途中で事情が変わり「住み続けられない」「譲渡を辞退したい」と言われてしまうことがあります。
以下のポイントは契約書に細かく定められているため、事前に確認しましょう。
- 途中解約時に違約金が発生するか
- 譲渡条件を満たさなかった場合の扱い(再契約・返却義務など)
- 災害などで建物が損壊した際の責任区分
特に、自治体ではなく民間オーナーが主体となる場合は条件が柔軟な一方で、自己責任の範囲も大きくなります。
不明点があるときは、司法書士や行政書士など専門家を交えて確認することで、安心して契約を進められます。
地域のルールや自治体の支援条件をチェックする
譲渡型賃貸を利用する際は、物件がある地域の独自ルールや自治体の支援条件を必ず確かめましょう。
自治体によっては住民票の移転・地域行事への参加・景観保全ルールの遵守といった地域社会との関わりを重視する条件が定められています。
ルールや条件を把握せずに入居を進めてしまうと、補助の対象外になったり、地域活動への参加が想像より多かったりとギャップを感じてしまいます。
入居者は、事前に公式サイトや移住相談窓口で詳細を教えてもらいましょう。
自治体の支援制度や地域コミュニティの特性を理解して選ぶことで、入居後の生活をスムーズに始められます。
譲渡型賃貸の利用が向いている人
「あまり初期費用をかけずにマイホームが欲しいけれど、なかなか一歩踏み出せない」という方も多いのではないでしょうか。
譲渡型賃貸は初期費用を抑えながら、自分らしい住まいを実現したい方に適しています。
ここでは、譲渡型賃貸の利用が向いている人の特徴を紹介します。
初期費用を抑えてマイホームを持ちたい人
譲渡型賃貸は、初期費用を抑えながらマイホームを手に入れたい方に向いています。頭金やローン審査が不要なため、まとまった資金がなくても将来的に家を所有できます。
通常の住宅購入では、頭金・登記費用・火災保険料・引っ越し費用を合わせると数十万円以上の準備が必要です。
一方、譲渡型賃貸では入居時にかかるのは敷金や家賃程度で、数年住み続けることで所有権を得られます。
住宅ローンを組みにくい方に限らず、自営業やフリーランスで収入が安定しにくい方にとっても現実的な選択肢といえます。
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所有を視野に入れて古民家で暮らしてみたい人
譲渡型賃貸はいずれ自分の家を持ちたいと考えながら、古民家暮らしをお試ししたい方にぴったりの仕組みです。
まずは賃貸として住み、生活スタイルが合うと判断したらそのまま購入に進めます。
特に古民家は立地や建物の状態、地域コミュニティとの関わり方によって満足度が左右されやすいため、お試しで住める期間があることで失敗を防げます。
物件によってはリノベーション済みの古民家も多く、断熱や耐震などの改修が完了しているため、安心して住めるのも魅力です。
古民家を持つのは少し不安な方や地方移住に踏み切れない方は、譲渡型賃貸を活用することで、将来のマイホーム取得を現実的に検討できます。
DIYで自分好みの家を作りたい人
譲渡型賃貸は、自分で家をカスタマイズしたい方にも向いています。一般の賃貸では退去時に原状回復義務があるため、DIYは制限されてしまいます。
古民家や空き家を活用する物件が多い譲渡型賃貸は、壁の塗替えや棚の取り付けなど自由にDIYできる環境が整っているのが特徴です。
将来的に所有権を得られるため、投資した時間や労力が無駄になりません。
ものづくりが好きな方や暮らしを自分のペースで作りたい方にとって、譲渡型賃貸のDIYは理想的な選択肢です。
関連記事:空き家DIYは初心者でも可能?注意点や事例を含めて徹底解説
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譲渡型賃貸は家賃を払い、一定期間後にマイホームを手に入れられる方法です。古民家リノベーションやDIYが可能で、通常の賃貸よりも自由度があります。
契約条件や譲渡時の費用、地域のルールを事前に理解しておくことが、安心して暮らすためのポイントです。
ただし、譲渡型賃貸は数が少なく、なかなか理想の物件に出会えないことも少なくありません。
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